株式会社麺屋武蔵 代表取締役社長
矢都木 二郎 氏
プロフィール
埼玉県生まれ。城西大学卒。大学卒業後、いったん一般企業に就職するが、24歳の時に独立開業を目標に麺屋武蔵に転職。以来、麺屋武蔵一筋。3年後、27歳で、上野店店長に昇格。店の運営・経営を任される。2013年11月11日、先代社長からバトンを受け2代目の、代表取締役社長に就任する。
──矢都木社長はラーメン屋という職業をどのように捉えていらっしゃいますか?
ラーメンに限らずなんですが、飲食自体が「職種」として人気ないですよね。このままでは飲食で働いてくれる人も増えない。飲食で働いてることを誇りに思える仕事にしていかなければと思うのです。飲食という職業の魅力をちゃんと伝えていけば、この業界で働きたいと思ってくれる若者が増えていく。麺屋武蔵がその先駆けになりたいんです。
──飲食の魅力を高めるために、どのようなことが必要でしょうか?
働く楽しさや、やり甲斐をアピールする事も大事ですが、まず土台となる報酬体系や労働環境の整備は絶対に必要です。麺屋武蔵では、安定した条件を保証できる正社員雇用を推進しています。働き手をもっと増やして、よりクリエイティブなことができるようにしたいですね。
あとはブランディングが重要です。ブランドとはお客さまが麺屋武蔵にもつイメージ。ブランドが評価されれば、仕事の幅も広がります。実際に多くの企業さまとコラボレーションを実現できているのも、麺屋武蔵のブランドを評価いただいた結果と言えるでしょうね。
──お客はどんな人が中心ですか?
サラリーマンが中心ですが、最近では海外出店で認知度が上がったこともあり、外国人のお客さまも増えてきました。もっと外国人のお客さまのストレスを軽減させてあげたいと思っているんです。なので、外国語対応の券売機に切り替えて食券を買いやすくしたり、日本語がしゃべれる外国人を接客要員として雇用したりしています。
──国籍や考え方が多様化してくると、マネジメントも大変になってきそうですね。マネジメント面で工夫されている点は、どのような点でしょうか?
工夫するというより、現場スタッフの働きやすい環境を作り、現場に権限移譲することです。現場のことはなるべく現場に任せ、口を出さないこと。店のことを一番理解しているのは現場スタッフです。現場を信じ任せる。そしてそのサポートに徹する。それに尽きると思います。
武蔵では現場スタッフの働きやすい環境を作り、現場に権限移譲することを大切としています。現場のことはなるべく現場に任せ、口を出さないこと。店のことを一番理解しているのは現場スタッフです。現場を信じ任せる。そしてそのサポートに徹する。それに尽きると思います。任せられることで当人も自身をつけよりよい仕事を行えるようになります。努力する人に対して周囲もサポートする社風が自然と生まれています。スキルを磨き、価値ある人材となることを武蔵は応援致します。
──では、どのような点をチェックされるのでしょう?
「客数」です。この数字はお客さまからの「通知表」だと私は考えています。客数が落ちるということは、お客様に喜ばれていないのということです。そのような場合は改善を求めます。改善策を押しつけるのもいけません。現場が「考えて、行動する」事が大事だと思います。
お客さまを喜んでいただくことの大切さを、先代から私は学びました。「ラーメンを作っているからお給料が出ているのではない。お客さまに喜んでいただいたからから、給料が出てるんだ」と言われた事は、私が社長になってからも皆に口酸っぱくして伝えています。
──社長の熱い言葉が伝わっているから、現場も付いてくるのですね。各店舗の雰囲気などはいかがですか?
どの店も活気があって、スタッフ同士も仲良いです。ただ一時期、アルバイトの方が社員よりもモチベーションが高い時期がありました。原因は、アルバイトはシフトを自由に組めるのに対して、社員は自由がきかなかったから。たくさん働きたい人もいれば、家庭を大事にしたい社員もいます。
──社員も働き方を選びたい、ということですね。
その通りです。そこで、正社員にも働き方の選択肢を持てるようにしました。たくさん働きたい人、休みを充実させたい人、「働かされる」ではなく自ら「働く」環境です。
現場が働きやすい環境を整えることを重要視していて、「逆ピラミッド」構造の組織体を敷いています。社員に上も下もなく、あるのは単なるポジションの違いだけです。私は現場が提案しやすい環境を整える担当をしているだけで、立場としては社長の私が一番下だと思っています。お客さまに喜んでいただいているのは現場であり、現場が一番大事でなければおかしいんです。
──社員に愛される会社作りについてお話しいただきましたが、お客に愛されるために大事にしていることは何かありますか?
2回目にご来店いただいた時でも「良い」と思われる営業ができているか、を大事にしています。映画と一緒で、事前情報があまりない1回目はサプライズが通用しますよね。しかし、2回目はネタバレしている。だから、本当の実力が試されます。逆に2回目に良いと言ってもらえたら、それは本物です。
──リピーターになってもらうには、どうすればいいんでしょうか?
基本を突き詰めるしかないと思っています。一般的にはQ(Quality:品質)・S(Service:サービス)・C(Cleanliness:清潔)が飲食店運営の基本として言われています。麺屋武蔵では、そこを「S・C・Q」つまり「元気・キレイ・いい味」と言っています。暖簾(のれん)をくぐってから出ていくまでの時間に対してお客さまはお金を払ってくださるので、私たちはお客さまが店にいらっしゃる時間に責任を持たなければなりません。この基本にどれだけ立ち返れているか。2回目以降の来店のチャンスはここにかかっていると考えています。
──麺屋武蔵の魅力として、独創的なコラボメニューもあるかと思います。コラボメニューについてのお話も伺えますか?
今までロッテさんとはチョコレートつけ麺「つけガーナ」、日本酒の獺祭(だっさい)で知られる旭酒造さんとは酒粕を使用したラーメン「獺祭酒芳味噌ら~麺(さけかおるみそラーメン)」を発表してきました。マネはされたいけど、マネは絶対したくない!もっともっと新しいラーメンを作りたいというマインドの賜物ですし、一緒にやりましょうと言ってくださった方々とのご縁に恵まれて実現したものだと思っています。
──コラボメニューの開発以外で、新しい試みは何かされていますか?
小学校に給食としてラーメンを提供しに行ったことは、新しいチャレンジだったかなと思います。衛生管理やカロリー計算がとても大変でした。でも、生徒たちと一緒に給食でラーメンを食べて「なんでラーメン屋になったの?」とか質問されたりすると、私もラーメン屋を志した当時の気持ちとかを思い出したりして。原点回帰できる、よい経験になりました。
あとは料理専門学校へ授業に行ったりもしています。1回目は調理のデモンストレーション、2回目は実際に作ってもらい、3回目はオリジナルラーメンのコンテストをするというカリキュラムを組んでいます。これによって、未来のお客さまでもある学生にラーメンを食べてもらえるのはありがたいですし、参加した社員にも自分の仕事に誇りを持ってもらい、よりよいラーメン作りにつながればいいなとも考えています。
──学生たちとの交流もよい刺激になっているようですが、社員教育についての社長のお考えを伺えますか?
社員には、お客さまに喜んでもらうスキルを必死になって磨いてほしいです。麺屋武蔵にかぎらず、若い間は「若い」というだけで市場価値がありますが、30過ぎると、それはなくなります。だからスキルを磨き、「自分」という「商品」にどれだけ「価値」をつけるか考えて働かなければいけないと思います。麺屋武蔵で培ったノウハウでまったく別の業界で活躍してくれる人が出てくると嬉しいですね。
──ご自身の今後についてはどのようにお考えでしょうか?
麺屋武蔵をもっともっと圧倒的なブランドにしていきたいですね。
「より革新的でより上質」と思っていただけるよう、スタッフと協力して頑張っていきたいと思います。
そして自分自身も麺屋武蔵で学んだことを活かして次のステップにチャレンジしてみたいです!
ダイヤモンド・オンライン |麺屋武蔵2代目社長が語る、飲食という職業の面白さ| より抜粋
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写真:保田敬介 文:田中利知
以下、代表矢都木の数々のインタビューをご紹介
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ダイヤモンド・オンライン
麺屋武蔵2代目社長が語る、飲食という職業の面白さ
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